日本は今や薬学に関して世界でも屈指の水準に達していますが、国の事業としての歴史は各国と比べてそれほど長いわけではありません。1880年に日本薬学会が発足され、そこから現代に至るまでの研究が始まりました。ただし、民間レベルでは平安時代の時点で既に薬園が設置されていたり、薬草に和名をつけていたりといった活動が行われていました。また、鎌倉時代には僧医の著書とされる薬種抄が撰出された記録が残っています。簡単な薬草の配合であれば、問題なく行えるほど、薬に対する知識を持つ人々が増えていきました。
江戸時代に入るとオランダを介して西洋の薬の知識がもたらされます。それまでの薬草や漢方を中心とした考え方に変化が生まれます。東洋と西洋を組み合わせたような薬が作られたのもこの時期です。民間レベルで成長していた薬への知識と西洋からの新しい知識が融合していきました。明治時代の1887年に長井長義という方が、生薬の麻黄からエフェドリンの単離に成功しました。薬学会発足から僅か7年で大きな実績を挙げたことは世界を大いに驚かせました。
その後は世界と切磋琢磨するような形でどんどんと薬の研究と開発を続けています。特に薬の世界に民間の企業が参入したことは進歩を大幅に加速されました。現代においては政府、大学、民間企業がそれぞれ連携して新しい薬の開発や低価格化を目指しており、その甲斐あってか毎年のように大きな発見が続いています。